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五日目。 ちっちゃな王子さまのくらしの中のひみつがひとつ、これまたヒツジのおかげで、明らかになった。彼は、なんの前置きもなしに、いきなりぼくにひとつの質問をしたんだ。それは、彼が長いことだまって考えてきたことだった。「ヒツジが、小さな木を食…
ねぇ、ちっちゃな王子さま。ぼくはね、こうしてちょっとずつ君の、ささやかで、感傷的な人生のことを、知っていったんだよ。君は、長い間ずっと、しずんでいく夕日の優しいすがたに、さびしい気分をまぎらわしてきたんだね。ぼくが、そのことについてくわし…
日を追うごとにぼくは、彼の星のこと、旅立ちのこと、そして彼の旅のことを知っていった。それらは、彼のばらばらな思考の中から、少しずつ見えてきたものだった。 そして三日目には、ぼくは「バオバブの恐怖」について知ることになる。それを知ったのはやっ…
こんなふうにしてぼくが知っていったことの中に、もうひとつとても大切なことがあった。それは、彼の生まれた星が、やっと家ひとつぶんよりも大きいかどうかの大きさしかない、ってことだ。 けれども、それはそんなにおどろくべきことじゃないのかもしれない…
彼がいったいどこからやってきたのかを知るのには、長い時間がかかった。 このちっちゃな王子さまときたら、ぼくにはやたらと質問をするくせに、ぼくの質問はまったく聞いちゃいないみたいだったんだ。それでも、なにかのひょうしにふとこぼれた言葉から、少…
そんなふうにして、ほんとうのことを話せる相手もいないままに、ぼくはひとりで生きてきたんだ。六年前に、サハラ砂漠のまんなかで、飛行機の故障が起こるまでは。どうやら、エンジンのどこかがイカレたみたいだった。ぼくには整備士も乗客もいなかったから…
六歳だったころに、ぼくは、ものすごい絵を見たんだ。その絵は、原生林について書いた『本当の話』という本の中にあったもので、猛獣をのみこんだ巨大なヘビを描いたものだった。その絵を写して描いたのが、これ。 本にはこう書かれていた。 「ボアという種…
サンプルをかねて、本の冒頭にある「献辞」を公開しました。